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退職代行を使うと決めても、気になるのは「残っている有給は使えるのか」「サービス残業の分は取り返せるのか」という2点ではないでしょうか。何も確認せずに申し込むと、有給を捨てて辞めることになったり、残業代の請求が別料金だと後から知ったりすることがあります。
先に結論を書くと、退職代行で有給消化の交渉を任せられるのは弁護士か労働組合で、未払い残業代の請求は弁護士でなければできません。民間企業の退職代行は、退職の意思を会社に伝えるところまでです。この記事では、有給消化の考え方、残業代請求のルール、依頼先ごとの違い、申し込む前に確認する質問をまとめます。
有給消化は労働者の権利。会社は原則断れない
年次有給休暇は、労働基準法第39条で定められた労働者の権利です。会社は、労働者が請求した時期に有給を与えなければなりません。例外は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限って、別の時期に変更を求められる時季変更権だけです。
ここで押さえておきたいのは、退職が決まっている人には時季変更権が使いにくいという点です。時季変更は「別の日に休んでもらう」ための仕組みなので、退職日を過ぎた日に振り替えることはできません。一般的にも、退職日までの有給を会社が一方的に断るのは難しいと解されています。「忙しいから有給は使わせない」「引き継ぎが終わっていないから無理だ」と言われても、そのまま従う必要はありません。
有給を使える日数は、給与明細や就業規則、勤怠システムで確認できます。有給の請求権は2年で消滅するため、前年度までの分が残っている人は、古い分から失効していく点も覚えておいてください。
退職日までに有給を使い切れるかは「出勤日の数」で決まる
期間の定めのない雇用契約では、退職を申し出てから2週間で契約が終了すると民法第627条に定められています。この2週間のうち、土日休みの会社なら出勤日はおよそ10日です。有給の残りがこの日数に収まれば、出社せずに全部を有給にあてて辞められます。
| 有給の残り(出勤日ベース) | 退職までの流れ |
|---|---|
| 10日前後まで | 申し出から2週間の出勤日をすべて有給にあてて、出社せずに退職日を迎えられる |
| 10日より多い | 退職日を後ろにずらして会社と合意するか、使い切れない分をあきらめるか決める必要がある |
| ほぼゼロ | 有給の交渉は不要。欠勤扱いになるため、出社できない場合は退職日までの扱いを確認しておく |
上の表のとおり、有給が多く残っている人ほど「退職日をいつにするか」が交渉のポイントになります。会社が退職日の延長に応じないときは、会社との話し合いが必要になるので、ここで交渉できる運営元かどうかが効いてきます。
なお、使い切れなかった有給を会社が買い取ることは、原則としては認められていません。退職時に残った分だけ会社の判断で買い取るケースはありますが、会社に買い取りの義務はないため、残っているうちに使い切る計画を立てるのが基本です。
退職代行で有給消化を任せられるのは、弁護士と労働組合
退職代行は運営元によって、法律上できることが決まっています。有給消化や残業代の請求に関しては、次のように分かれます。
| 運営元 | 有給消化の交渉 | 未払い残業代の請求 |
|---|---|---|
| 弁護士法人 | できる(代理人として交渉) | できる(請求・労働審判・訴訟まで) |
| 労働組合 | できる(団体交渉) | 組合により範囲が違う。裁判などの法律事務は対象外 |
| 民間企業 | できない(希望を伝えるのみ) | できない |
民間企業が会社と交渉することは、弁護士以外が報酬をもらって法律事務を扱うことを禁じた弁護士法第72条(非弁行為)にあたる可能性があります。弁護士ドットコムの解説でも、退職の意思を伝えるだけなら違法とは限らない一方、条件の交渉は弁護士でないと難しいと説明されています。
「有給を使いたい」と民間企業の退職代行に伝えても、会社から「認めない」と返されれば、そこから先は交渉できません。結局、弁護士や労働組合に頼み直すことになると、費用が二重にかかります。料金の目安と運営元ごとの違いは退職代行の費用相場と選び方で詳しく整理しています。
未払い残業代を取り戻したいなら、時効と証拠が先
残業代の請求は、退職代行の申し込みとは別の話として進める必要があります。ここで気をつけたいのが時効です。賃金の請求権は、労働基準法では5年と定められていますが、当分の間は3年とされています(厚生労働省のリーフレット)。2020年4月以降に支払われた賃金が対象で、古い分から順に請求できなくなります。退職してから時間が経つほど、取り戻せる金額は減っていきます。
残業代は、おおまかに次の式で計算します。
- 1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間
- 割増率は、時間外労働で25%以上、深夜(22時〜5時)で25%以上、休日労働で35%以上
- 月60時間を超える時間外労働は、50%以上になる
請求するには、働いた時間を示す証拠が必要です。会社が出退勤の記録を出さない場合もあるので、辞める前に手元に集めておきましょう。
- タイムカード・勤怠システムの画面(スマホで撮影しておく)
- 給与明細と雇用契約書、就業規則
- 始業・終業の時刻が分かるメールやチャットの送信履歴
- 自分で毎日つけた出退勤のメモ
証拠の集め方や計算の詳しい流れは未払い残業代の請求方法、給与明細の見方は給与明細の見方とチェックリストにまとめています。会社が記録を出さない、話し合いに応じないといったときは、労働基準監督署への申告手順という選択肢もあります。
残業代の請求まで任せるなら、弁護士の費用も見ておく
弁護士に残業代の請求を頼む場合は、退職代行の基本料金とは別に、成功報酬がかかるのが一般的です。たとえばガイア綜合法律事務所の公式サイトには、未払い給与・残業代の請求は獲得できた場合のみ成功報酬20〜30%がかかると記載されています(2026年10月6日時点の確認)。請求が通らなければ報酬は発生しない形ですが、基本料金は別に必要です。
請求できる残業代が少額なら、成功報酬を引くと手元に残る額が小さくなることもあります。逆に、サービス残業が長期間続いていた場合は、数十万円から数百万円になることもあるため、先に概算を出しておくと依頼先を選びやすくなります。
状況別・どこに頼むか
| 状況 | 向いている依頼先 | 理由 |
|---|---|---|
| 有給は数日しかない。退職の連絡だけ代わってほしい | 民間企業・労働組合 | 交渉が要らない |
| 有給が10日以上残っている。退職日も調整したい | 労働組合・弁護士 | 会社との交渉が必要になる |
| サービス残業が長く続いていた。残業代も取り戻したい | 弁護士 | 請求は弁護士の領域 |
| 会社から損害賠償や懲戒をほのめかされている | 弁護士 | 法的な反論が必要になる |
| 会社が離職票などの書類を出してくれるか不安 | 労働組合・弁護士 | 書類の送付についても会社と協議できる |
「弁護士は料金が高い」と感じる人が多いのですが、残業代が絡む場合は、成功報酬を払っても手元に残る金額のほうが大きいことがあります。反対に、有給の交渉だけで済むなら、労働組合の退職代行で足りるケースも少なくありません。
4つの退職代行の対応内容(公式サイトで確認した内容)
この記事で紹介する4つのサービスについて、2026年10月6日時点で公式サイトに書かれていた内容のうち、有給や請求に関わる部分を整理します。税込表記で、内容は変わることがあるため、申し込む前に最新の公式サイトで確認してください。
| サービス(運営元) | 料金 | 有給・請求に関する記載 |
|---|---|---|
| ガイア(弁護士法人ガイア綜合法律事務所) | 25,300円・55,000円・77,000円の3プラン | 25,300円は「退職を伝えるのみ」のプラン。未払い給与・残業代の請求は、獲得できた場合のみ成功報酬20〜30%がかかる |
| 退職代行Jobs(株式会社アレス/連携労組は合同労働組合ユニオンジャパン) | 27,000円(組合費込みの安心パックは29,000円) | 労働組合と連携。組合に後から加入する場合は加入金2,000円・組合費2,000円がかかる |
| ネルサポ | 15,000円 | 「追加料金なし」「退職できなければ全額返金」の記載あり。運営元の詳細は公式サイトに記載なし |
| 円満退職ユニオン(労働組合法人) | 加入時16,000円(以降、月6,000円の組合費) | 退職日の調整や有給取得についての協議に対応するとされている |
公式サイトの文言だけでは、どのプランで有給の交渉まで含まれるのかが分かりにくいサービスもありました。ガイアのように、基本の価格帯が「退職を伝えるのみ」で、交渉や請求は別プラン・別料金になる場合もあります。有給の交渉と残業代の請求を、それぞれ料金に含むのかを、契約の前に必ず質問してください。
有給消化や残業代まで任せたいときの選択肢
会社との交渉や請求が必要になりそうな場合に、弁護士や労働組合が関わる退職代行を挙げておきます。料金やプランの内容は変わることがあるため、申し込む前に各公式サイトで確認してください。
有給消化や請求まで相談したい場合の選択肢
弁護士法人が運営する退職代行【ガイア法律事務所】
弁護士監修・労働組合連携の退職代行【退職代行Jobs】
退職代行【ネルサポ】
退職代行【円満退職ユニオン】
申し込む前に聞いておきたい6つの質問
どのサービスでも、申し込む前に次の点は文面で確認しておくと、あとからのトラブルを避けやすくなります。
- 有給消化の交渉は、基本料金に含まれているか
- 退職日を後ろにずらす交渉まで対応してもらえるか
- 未払い残業代の請求は対応しているか。別契約や成功報酬はいくらか
- 運営している会社名・組合名・事務所名が明記されているか
- 追加料金が発生する条件は何か。返金の条件はどうなっているか
- 離職票や源泉徴収票などの書類を、どう受け取るか
有給の残り日数と、直近3か月の給与明細、勤怠の記録を手元にそろえてから相談すると、話が早く進みます。
自分で有給を申請する場合の伝え方
上司や人事と普通に話せる関係なら、退職代行を使わず自分で伝えるほうが費用はかかりません。退職の意思を伝えるときに、有給を使いたい旨を一緒に書いておきます。口頭だけだと後から言った言わないになるため、メールや書面で残しておくのがおすすめです。
- 退職したい日(希望日)
- 退職日までに残っている有給を、その期間に取得したいこと
- 引き継ぎは、出社できる範囲で資料を渡すこと
引き止められたときの切り返し方は退職を伝えたら引き止められた時の対処法に、有給を断られたときの対処は有給休暇を拒否されたときの対処法にまとめています。会社が退職自体を認めない場合は会社が退職を認めてくれないときの対処法を確認してください。
「話すこと自体が怖い」「話しかけると体調が悪くなる」という状況なら、無理に自分で動く必要はありません。そのときは、交渉できる運営元の退職代行を選ぶことで、有給の希望も一緒に伝えてもらえます。退職代行を使ってよい人・避けたほうがよい人は退職代行を使っていい人・ダメな人に整理しています。
退職後のお金も、あわせて考えておく
有給を使い切れなかったり、残業代の回収に時間がかかったりすると、退職後の収入が途切れる期間が出ます。離職後の手続きは失業保険のもらい方と申請の流れを、病気やうつで働けない場合は傷病手当金の申請方法を確認してください。雇い止めで辞める場合は雇い止めされたときの対処法と相談先も参考になります。
よくある質問
Q. 退職代行を使ったあと、有給の日は出社しなくてよいですか?
有給を使う日は、出社しなくて構いません。退職代行を使う場合も、会社に有給の希望を伝えたうえで、その日数分を退職日までの休みにあてる流れになります。会社が有給を認めない場合は、交渉できる運営元でないと話が進まない点に注意してください。
Q. 会社が有給の取得を認めないと言ってきたら、どうなりますか?
時季変更権は、退職日を超えて使えないため、退職が決まっている人の有給を断る根拠にはなりにくいと考えられます。それでも会社が応じない場合は、弁護士か労働組合の退職代行を通すか、労働基準監督署に相談する方法があります。
Q. 退職してからでも、未払い残業代は請求できますか?
退職後でも請求できます。ただし、時効は当分の間3年なので、古い月から順に請求できなくなっていきます。退職後に請求するなら、在職中に集めた証拠が重要です。
Q. 民間企業の退職代行で、有給の話をするとどうなりますか?
有給を使いたいという希望を会社に伝えることはできます。ただし、会社が断ったときに交渉することはできません。有給の消化を確実に進めたいなら、労働組合か弁護士を選ぶほうが確実です。
まとめ
退職代行で有給消化を進めたいなら、会社と交渉できる労働組合か弁護士が選択肢になります。未払い残業代の請求は弁護士の領域で、基本料金のほかに成功報酬(20〜30%前後が目安)がかかります。有給は退職日までの出勤日数との兼ね合い、残業代は時効(当分の間3年)が判断の軸です。申し込む前に、有給交渉が料金に含まれるか、残業代の請求は別契約かを文面で確認しておけば、後悔は減らせます。





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